行政マンの仕事の正確性と柔軟性

真面目に行政の仕事を行えば変なことが起きますが、それを補うのが政治です
小野泰輔 2025.09.23
誰でも

市長に就任して10日ほどたった週末、ある方から私のLINEに連絡が入りました。

「市立保育園が先日の水害で床上浸水となり、早期復旧工事が行われているのだが、教室の手前側の浸水した部分だけが新しい床に張り替えられたものの、浸かっていない奥側が既存の床のままのため、新しい床と古い床をつなぐジョイントが段差になって危ない。保護者も心配している。何とか対応してもらえないか」というものでした。

この市立保育園は、障害を持った子どもたちも受け入れており、肢体不自由な子どもがこの教室で歩いたりするので特に配慮が必要とのことでした。

私が現場に行ったときは、複数の浸水した教室のうち1つについてこのような改修が完了しており、明日から同様のやり方であと2つの教室が同じような工法で施工される予定でした。

なぜこのようなことが起こってしまったのか。それは、災害復旧の事業は、被害を受けた箇所に対してのみ行われるという厳格なルールがあるからです。

災害復旧に関しては国の補助率も高いので非常に助かるのですが、もちろん国民の税金を使って行うのですから、復旧に関係のない箇所は対象にはなりません。

当然、真面目に執行すると、今回のような被災した箇所のみ災害復旧工事が行われ、被害のなかった箇所と接続するということになるのです。

しかし、子どもたちにとって、自分たちが毎日使う教室のどこからどこまでが災害復旧箇所かなのかは重要ではありません。

それよりも、ジョイントの段差があることによって転んでけがをする危険性があることのほうが問題です。

このままの方針で進めれば、明日からあと2箇所の教室にも段差ができてしまう。そのままにするのか、他の考えを示すのか、すぐに判断をしなければいけません。

私の出した結論はこうです。市独自の予算を使い、浸かっていない部分も撤去し、災害復旧工事の部分と同じ仕様で施工し、ジョイントを使わず段差ができないようにする。

もちろんお金は余計にかかりますが、何を一番大切にするかが重要です。

この場合は、子どもたちの安全を最優先にする、保護者にも安心していただける対策を行う、ということです。

行政は、法令の根拠に基づいて執行します。それは民主主義ではとても大切なことなのですが、時としてそのことを突き詰めると、ちぐはぐなことが起こってしまいます。

そこで出てくるのが政治です。制度は遵守しつつも、柔軟に考えて何とか問題がうまく解決できるようにできないか。このような発想が政治家には求められます。そして、政治家だけでなく、行政マンにもこのような視点を持ってもらいたいと考えています。

今回の件も、声をあげて私に伝えてくださる方がいなければ、行政が粛々と段差のある教室として復旧工事を行うことになったと思います。

市民の声を聞くことが重要だ、と選挙戦中から訴えてきましたが、今回のケースはまさにその典型例です。

政治家や行政マンの側が市民の声を聞く姿勢をとることも大切ですが、市民の側が声を届けようとすることも同様に重要です。そういうことが日常的に行われる政治・行政を目指していきたいと思います。

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